レタッチまでは前回までのふたつで行ったわけで、今日はその先、それを投稿したSNS、PhotoShareの紹介。というか、今更紹介するまでもないほど、日本に於いては“超”のつく有名Appですね。
僕のPhotoShareは→のリンクにあるので、暇な方はご覧ください。
一応知らない人向けに説明をしておくと、Windowsの開発に携わった日本人であり、アルファブロガーとしても有名で、高い実績と海外での知名度も抜群な中島聡氏。その彼がマイクロソフトを退社してベンチャー企業を経て、今取り組んでいるもののひとつがiPhone App。ということで、まあ期待が集まらない方がおかしい、という状況だったですね。
なのでPhotoShare関連の記事はネットに幾らでもあるし、ご本人のBlogもPhotoShare関連の投稿がたくさんあり、今更ちまちまと機能紹介することもないので、というかそれ以前に非常によくできたインターフェースのおかげで説明するまでもなく簡単に使えるしね)、機能そのものでなく、その存在意義や付随する部分について書いてみようかと。
起動するとこういう画面。
上下に滑らかにスクロールできて、見たい項目をタップすればするっと右にスクロールしてその項目の画面に。
更にそこからどれかを選ぶとまた右にするっとスクロールして写真の画面に。
※この“右にするっとスクロール”がどうしてもSS撮れません…。操作中にSS撮る方法ないものか…。
なお、これら起動中のどの画面でも右下にアイコンが表示されており、このアイコンをタップすることで、投稿はどの画面からでもできます。
で、内容としては写真投稿&コメント機能のSNSということで、取り立てて“新しい何か”があるわけではないです。それなら他に幾らでも、それこそネットの世界にならホントに幾らでも似たようなモノや、先駆者や、既に大きく育っているモノもあるわけです。それでも敢えてこのAppを作り、リリースしてきただけあって、他とは違うモノがあります。
が、それを説明するのは非常に非常に難しいです。中島聡氏はそれを『 おもてなし 』だと表現しています。ユーザー・エクスペリエンスという言葉があります。彼はこのおもてなしという表現を、ユーザー・エクスペリエンスに該当する日本語として用いています。@ITの用語事典から引用すると
ユーザー・エクスペリエンス
user experience / ユーザー体験
製品やサービスの使用・消費・所有などを通じて、人間が認知する(有意義な)体験のこと。製品やサービスを利用する過程(の品質)を重視し、ユーザーが真にやりたいこと(本人が意識していない場合もある)を「楽しく」「面白く」「心地よく」行える点を、機能や結果、あるいは使いやすさとは別の“提供価値”として考えるコンセプト。
認知心理学者で、かつて米国アップルコンピュータでユーザーエクスペリエンス・アーキテクトの肩書きを持っていたドン・ノーマン博士(Dr. Donald Arthur Norman)が、「ヒューマン・インターフェイス」や「ユーザビリティ」よりも、さらに幅広い概念を示すために造語したものが由来とされる。
とあります。
ただ“使いやすい”だけのインターフェースではなく、触って気持ちいい、使っていて楽しいと思わせる。その領域での体験の提供。それこそがPhotoShareの目指したものではないかと思います。
野暮、且つ、的外れになるとは重々承知の上で、いくつかそのおもてなしの心意気の実装を紐解いてみたいと思います。ぐだぐだと長くなるけど、気にしない!
最初の起動画面でスクロールをしていくと、
わかるでしょうか?ただ上にスクロールしていくだけでなく、メニュータイトル部分(グレーの部分)はそのまま画面の上の位置に残り、項目だけがスクロールしていきます。おまけに透過になっているので、下にスクロールしていった項目が透けて見えています。
更にスクロールしていって、ひとつ下のメニュータイトルが並び、更にいくとメニュータイトルがスクロールアウトしていきます。
なんだそれだけか、と思うかもしれません。確かに機能・実装という意味でならそれだけです。でもたったこれだけのことでも、その根底にある思想、精神は垣間見えます。
例えばこれが、メニュータイトル部分ごと普通に上にスクロールアウトしていったとしたら、ほんのちょっとスクロールしただけで画面から消えてしまい、項目分けをしている意味がなくなります。分けられていない項目がだらだらと並んでいるだけならスクロールしなければならず、一画面に収まりきらない長さのメニューと同じで、ただ見づらいだけ、になってしまいます。
透過処理がなければ、タイトルの下に隠れてスクロールしていると感じにくくなり、iPhoneのインターフェースの特徴である“滑らかなスクロール”感を半減させてしまいます。
下のタイトル項目が追いついて、押し出すようにスクロールする部分があるおかげで、幾つかにまとめられた項目と切り替わる部分なんだと、意識せずに認知できます。常に、今画面中央にあるメニューが何の項目であるかをトップに表示しつつ、指一本でさらさらとスクロールする快適さを失わず、縦に長いだけで見にくい・使いにくい状態にすることもなく、実現しているわけです。
比較対照として、今このページをPCで見ているものとして、そのブラウザソフトのインターフェースを見てみましょう。
まず大きくファイルや編集、表示といった機能別に項目が分けられていて、

更にそれをクリックするとドロップダウンメニューがでて、

大まかに分けられ横線で区切られた中から機能を選び、更に右にもう一段メニューがでて、と続いていくわけです。
大きな画面とマウスを使ったインターフェースならこれはこれで便利でしょう。でもiPhoneでこういうメニューを実装しようとしたら?そのままではとても使い物になりませんね。そもそも画面が狭いのだから、何段階も降りていくようなメニューをだらだらと描画するのは無駄だし見づらいですから。
じゃあひとつ選ぶたびに画面を切り返るような形にしたら?それもダメです。そうしてしまったら今度は、行きたい先はわかっているのに何回も画面の切り替えをしなければならなくなってしまいます。それではユーザーはストレスを感じます。
じゃあテンキーのように機能をタイル上に並べて、それをタップして選択する形にしたら? いけるかもしれません。ただし、その場合は並べられたモノは全て対等に見えるため、機能別にいくつかずつまとまっている等の視覚的な要素を付加することができません。字の大きさを変えるなどで多少の差異は与えられても、全体メニューのような多要素・多項目でそれを視覚的にわかりやすくするのは難しいのではないでしょうか。
それに立ち上げるたびに見る画面、そこから操作する画面において、よく使う操作のいくつかが、余計なタップを必要とするようでは話になりません。よく使う機能や操作はもちろんのこと、慣れた人が使う場合と初めて操作する人が使う場合も考慮にいれなければなりません。見やすく、わかりやすく、でも無駄な操作は極力排除可能なこと。これだけでも大変なことです。
更には、使い慣れたユーザー・初めて触るユーザー、そのどちらにもそのわかりやすさ使い易さを提供しなければなりませんし、iPhoneというデバイスを考えれば、それはケータイされるもので、立ったままや移動しながら操作することが想定されるものであり、複雑な操作や精緻な操作を要求するものであってはなりません。数多ある他のスマートフォンのようにスタイラスがあるわけでもないですしね。
とまあこんな感じで、メニューの見せ方や操作形態ひとつとっても、簡単ではないわけです。
iPhoneというハードの物理的な操作方法を理解し、尚且つ、ユーザーが実際に使う場面を想定し、その“ユーザー”も慣れた人慣れてない人、色んなケースを想定し、できるだけ多くのユーザーに大して“おもてなし”を提供する。そこまで考えてから先に説明したPhotoshareのインターフェースを再度見てみると、これがとてつもなく練り込まれ、考え抜かれたものであるかがわかると思います。
もちろん、PhotoShareのそれが最適解だとは言いません。他にも様々な優れたインターフェースを搭載したAppもありますし、人によってはPhotoShareのそれを使いにくいと感じるかもしれません。最終的に正解があるわけではないものだから。でもだからこそ、中島聡氏はそれを思案し、取捨選択し、実装して提供しようとしてくるわけです。
WindowsMobile機のインターフェースを考えてみてください。アレが本当に使いやすいモノでしょうか?デスクトップOSであるWindowsのインターフェースを引き摺りすぎていると思いませんか?もちろん、そうすることで、Windowsを使っている人にとって、わかりやすさ足りえるでしょう。でもケータイし、その状況下で使うデバイスとして使い易いとは言えないと思うのです。だからこそ僕はiPhoneというデバイスを選択しているわけです。そしてそのiPhoneに於いても、更にそのユーザー・エクスペリエンスを満たしてくれるようなAppに期待するわけです。
例えば、写真投稿型SNSとしては最大手かつ先駆者であるFlickrがあります。Flickr用のAppも幾つかでてるし、Flickr自身もiPhone用に特化したインターフェースのサイトを用意しています。僕自身、Flickr垢持ってますし、そっちにも投稿してます。でもiPhoneを使っていて、さくっと投稿しようとするとPhotoShareの方が使いやすいんです。もう少し言えば、PhotoShareの方が使いたいと思わせてくれるんです。本当に本当に素晴らしいインターフェースです。
しかも、これほどまでに練りこまれたUI、UEを持つ写真投稿・閲覧用Appはいまだにないです。iPhone発売と同時期、AppStoreスタート時にリリースされていたにも関わらず、です。後から時間をかけて作ったものがよくできている、だったらまだしも(それでも充分すごいと思うけど)、最初にでてきてコレです。もうホント、すごいとしか言いようがないです。
更にこれ無料App。(これを普及させた上で、別の関連Appなどで収益を考えよう、ということらしいです)最初に書いたように、メジャーになる色んな要素があるとはいえ、最初期にリリースされたにも関わらず、いまだにAppStoreの写真部門の無料AppランキングでTop10入りし続けているのも納得です。
気負わずに使えるApp、試したことのない人は少ないんじゃないかとすら思うけど、まだな方は只だし、触ってみるべし!
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